子供たちに、アルファベットを教えるために作られるABC絵本は、たくさんの絵本作家たちが、工夫を凝らし作られた楽しい絵本がたくさんあります。ABC絵本には通常の絵本と違い、ページには物語を語る文字は、ほぼ見当たりませんし、物語自体ないのです。文字はなくても、絵だけで物語を語る絵本はいろいろありますが、物語が存在しない絵本というのも、ABC絵本の特徴と言えるでしょう。というより、物語が存在してはいけないのかもしれません。

『アルファベットを憶える』。これが、ABC絵本の最大の目的です。
26の文字を使う。そんなシンプルな目的だからこそ、絵本作家の力量が問われ、絵本作家も挑戦しがいのある仕事になるのではないでしょうか?

26の文字を順番に使い、その文字を強調することで楽しみながら、気がついたらアルファベットを憶えてる。シンプルなページなのに、何度も何度も見たくなっちゃうような飽きのこない工夫。そして、見る度に新しい発見があったりする。子供の目は、素直です。つまらなければ、すぐに投げ出してしまいます。それでは、アルファベットという文化の基礎を体に染み渡らせることはできないでしょう。同じページを繰返し見ることで、文字を文字として捉えられるのでしょう。今回ご紹介するABC絵本は、かつて、子供たちに愛用され親しまれていたにも関わらず、時代の流れによって忘れ去られてしまったものばかり。
しかし、その『アルファベットを憶える』という能力には全く衰えはありませんし、絵本の豪華なつくりから言えば、
現代流通している絵本よりも、はるかに魅力的なのです。


ABC of Ecology』より


さまざまな乗り物と共演するアルファベット

Ride with Me Through ABC1968

 ただただ、アルファベットを並べるだけでは、絵本としての役目を果たすことも、絵本としての存在価値のみじんも感じられません。そこで、様々なキーワードを合わせることで楽しく遊びながら学べる習慣ができるというものですよね。例えば、乗り物、動物、たべもの、などなど。子どもたちの身近にあるものの中から、アルファベットの存在を見つけだすことによって、覚えるという感覚ではなく、子供の頭の中にあるイメージとアルファベットが一致するような感覚。
 もしあなたが、「旅行するならどんな乗り物でどんなところへ行きますか?」と言われたら、何を思い浮かべますか?となり町までの近い旅なら自動車。燃料は満タン?タイヤはパンクしてない?しっかりハンドルを握ってアクセル踏んで爽快に走り出すほうですか?それとも助手席で全面に広がる景色を見ながら目的地までの道のりを楽しみますか?VIPな気分で後部座席もいいですね。ちょっと遠くの街なら飛行機や電車、道のりの景色や空気を楽しめるバイク、宇宙旅行ならロケットを使うしかありませんね。そんな様々な乗り物の楽しさをに夢中になっているうちにアルファベットが頭の隅々まで行き渡っちゃうのが『Ride with Me Through ABC(1965)』。
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イラストはHorst Lemke(ホルスト・レムケ)。1922年のベルリン生まれ。絵本はあまり残していませんが、たくさんの児童書に挿し絵を提供していたようです。ラフスケッチがそのまま絵本になっているようなユルい雰囲気に、コラージュを織りまぜバランスをとってます。色彩感覚は抜群。“utomobiles”“oats”“rains”“ondolas”“amel”“iding−Scooters”などなど、楽しい乗り物がページ全面に余すところなく登場します。今度どこかへ旅に出るときは、行くところより、何で行くかを気にしてみるのも面白いかも


(右上)X-stasy it would be To soar through cloud of fantasy.より
(左)Squeeze into streetvar,Sweet,And ride o someone else's feet.より


可愛いだけじゃない、動物たちの野性味

Celestino Piatti's Animal ABC1966
 
 絵本に登場する動物、例えばライオン。可愛らしく描かれることが多くて、ライオンが好きな子供たちも多いんじゃないですか。でも、実際のライオンは肉食で、どう猛で、鬣をいからして威張っている。かなり恐い。クマ。はちみつを美味しく舐めて、むくむくしてて、穏やか。でも実際は・・・。そんな、可愛らしいキャラクター的な動物たちを、本当に恐く描いちゃったのが『Celestino Piatti's Animal ABC』。


L M The lion hears The mouse's plea And since he's small Lets him go free

 Celestino Piatti(セレスティーノ・ピアッティー)は、1922年スイス・ウェンゲン生まれ。グラフィックデザインを学んだあと、フリッツ・ビューラーの事務所でデザイナーとして働き、その後、奥さんとスタジオを開きます。広告全般から、本の装丁まで幅広く活躍し、たくさんの作品を残しています。「子供たちに忘れられないように、印象に残るデザインを作る」ことをモットーにした彼の絵本は、あまりにも強烈で大胆な太い線によって構成され、一度見たら必ず脳裏に焼き付いてしまいます。『Celestino Piatti's Animal ABC』でも、見開きページ全体を使いきり、たった一頭のキリンを大きく描いていますが、それでも全体が入っていないほどなのです。
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広〜い宇宙空間で見つけたアルファベット

space alphabet1964


 人類の夢「宇宙」、そこには、子供の夢もいっぱいつまってますね。 そんな宇宙の中から、アルファベットを拾い集めた一冊が『space alphabet』。“Astronaut(宇宙飛行士)”“Capsule(カプセル)”“Moon(月)”“Rockets(ロケット)”“Telescope(望遠鏡)”。なんとも、広がりのある言葉がたくさん見つけられますね。
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最強コンビのABC絵本はABCだけじゃなかった!

ABC Science Experiments1970
ABC of Ecology1972


 とにかくたくさんの科学絵本を手掛けたHarry Milgrom(ハリー・ミルグラム)と日本でも有名な「はしれ!かもつたちのぎょうれつ」で、'79にコールデコット賞を受賞したDonald Crews(ドナルド・クリューズ)の最強コンビ手を組んだ2冊のABC絵本はやっぱり最強。
ABC Science Experiments』では、ABCを覚えながら身の回りに起きる不思議を紐解いちゃう科学ABC絵本。ストローを使って、手に息を吹き掛けてみよう!何を感じる?何が聞こえる?何が見える?持っているボールを高い所から落としてみよう。ボールはどうなる?コップを水に浮かべて。ペニー硬貨をコップの中に入れてみて。コップに何が起きた?ABCに沿った問題形式でページを構成し、最後にはきちんと答えと解説まで出ています。そして、クリューズさんのイラストが、グラフィカルに答えを導きだしますよ。
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  ABC of Ecology』では、ABCを追いながら環境問題が簡単に理解できちゃう、という優れもの。ページを作っているのは環境に汚染に関係する様々な写真。tmosphere(大気)、ottle(ビン)、an(缶)、ust(埃)などなど。そして、この絵本でも問題形式を採用し、答えと解説を示し、子どもたちと一緒に、環境問題を考えようというもの。詳しくみる


いつもの見慣れた景色から、アルファベットを見つけよう!
  
ALPHABET WORLD1971

 
 窓からみえるいつもの光景、いつもの電車から見える景色、机の上、上司の顔。よーく見てみましょう、必ずアルファベットが見つけられるんじゃありませんか?
 階段の手すりがクルクルッと“G”になっていたり、巻きテープの端、不思議なタワー、外階段、蛇腹のシャッターなどなど、なんだか不思議なものから、アルファベットを見つけているのが可愛らしくて魅力的な『ALPHABET WORLD』。アルファベットが隠されている写真、そこに答えが印刷されているトレーシングペーパーを重ねあわせる面白い仕掛け(トレーシングペーパーなので、重ね合わせた時にアルファベットが隠されている写真のページが透けて見えるように工夫されているのです)。
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万華鏡を覗いたような鮮やかな数の絵本

Brian Wildsmith's 1,2,3's1965

 ブライアン・ワイルドスミスが作った数の絵本『Brian Wildsmith's 1,2,3's』は、子供たちが大好きな様々な“形”をテーマにし、そこに、ワイルドスミスお得意の色彩を組み合わせ、まさに万華鏡を覗いているような感覚。ページ全体に広がっているのは丸、三角、四角、多角形・・・、そして、それらが幾通りも組み合わせられた“形”。その上にワイルドスミス独特のブルー、イエロー、グレー、そして、レッド、オレンジ、ピンクなど寒色系に感じさせる暖色系の数限り無い“色”。こんなマジックのような図柄をみたら、誰だって興味をそそられるはず。あっという間に、数字が頭の中に入ってしまうでしょうね。後半は、さまざまな形と色の中から、丸や三角や四角がいくつあるかを数えさせる問題形式になっていて、子供たちの理解度を確かめることもできます。とにかく簡単で、楽しく、刺激的。
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キュートな船長のキュートなタグボートで、キュートに数のお勉強
Captain Murphy's Tugboats1963

 キャプテンマーフィーはタグボートの船長で、タグボートが大好き。そんな船長、あるとき古いタグボートを1隻買いブルーにペイント、そして、ちっちゃい本に“1(のタグボート)”と書きました。次に買ったタグボートはピンクにペイント、ちっちゃい本に“1+1=2(のタグボート)”と。次はカーキにペイント、“2+1=3(のタグボート)”。『Captain Murphy's Tugboats』、子供の大好きなタグボート、キュートなキャプテンマーフィー、そして、10隻までカウントアップするタグボートは毎回違う色にペイントされていて、いつの間にか1から10まで憶えちゃいそうです。
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アリス & マーティン・プロヴェンセンのアルファベット

 A PEACEABLE KINGDOM1978 

 リズムとテンポのいい詩と、たくさんの動物や昆虫が登場する『A PEACEABLE KINGDOM』。サブタイトルには「THE SHAKER ABECEDARIUS」と。 SHAKERとは、キリスト教の一派で、質素で無駄なく人種や男女差別がない、という信条で活躍していた一派。歌や踊りが大好きだったSHAKER派は、学校でもたくさんの歌と踊りを取り入れ楽しく過ごしていたそうです。そんな歌が大好きだったSHAKER派の子供たちにアルファベットを教えるには、やはり、リズムとテンポのいい詩を使うのが一番。詳しくみる



キーワードになるいくつかの単語から、イメージを膨らませてからページをめくる絵本
 
【A FOR ANGEL1969

 ベニ・モントレソールは、「ともだちつれてよろしいですか」「クリスマス・イブ」などが有名。彼は、「絵本とはイメージによって内容を表現する本のことである」と言っています。彼の絵本を象徴する言葉で、文字を補うためのイラストではなくて、イラストで内容を伝えようという意図が伝わってきますね。『A FOR ANGEL』では、伝えたい文字(この絵本では、1ページに1つのアルファベット)だけしか登場させず、先ほどの言葉を実践しているのが分かります。目次には、そのページのタイトルとキーワード、そして「どんな絵が描いてあるか一生懸命考えてからページをめくってみてください」と書かれ、例えばAのページでは、タイトルが「Th Angel's Apple」、キーワードは「Airplane」「Angel」「Apple」と。よーく考えて、イメージを膨らませてみて下さいね。
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早口言葉というアプローチ
PETER PIPER'S ALPHABET1959

 アメリカの子供たちの舌使いの練習に使われるたくさんの早口言葉。そんな早口言葉を集めて、アルファベットのお勉強にまで使えちゃう絵本『PETER PIPER'S ALPHABET』。早口言葉ですから、意味なんてあるようなないような単語の羅列を、愉快なイラストに仕立て上げるマーシャ・ブラウンには脱帽。
(下)(右)QUIXOTE QUICKSIGHTの1コマ
日本人でも馴染みのある“Peter Piper picked a peck of pickled Peppers(ピーター・パイパー・ピックツゥ・ア・ぺック・オブ・ピクルドゥ・ペパーズ)”などなどとともに描かれているイラストを見ているだけで、早口言葉をしゃべってみたくなっちゃいます。
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アダムとイヴが動物に名前をつける物語

Adam's Book of odd Creatures1962

 動物たちに名前をつけなければならないアダムは、26のアルファベットをつかい、その動物たちの特徴とする単語をもじって名前にしていきます。例えば、flounder(ひらめ)、ものすごくflat(たいら)だからF。jerboa(飛びネズミ)、とってもよくjamp(飛ぶ)からJ。tumblebug(だいこくこがね)、よくtumble(転がる)からJ。こんな命名の仕方だから、ちょっと変わった名前になっちゃているのかもしれませんね。AIGA(American Institute of Graphic Art)の、CHILDREN'S BOOK 1961-1962に選出された傑作『Adam's Book of odd Creatures』。
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「The sun dropped down」の1カット



teddybears 1 to10』より

テディベアのとっておきの2冊

teddybears 1 tO 101969
teddybears abc1974


 ある日、テディベアたちのところにお客さんがやってくるところから始まるABC絵本『teddybears abc
詳しくみる。お客さんが到着(rriving)したら、お客さん専用の部屋を建て(uilding)、お客さんと踊って(ancing)、食べて(ating)、かくれんぼ(iding)したりと大忙しなんです。『teddybears 1 to10詳しくみるに登場するテディベアは、汚れ疲れて洗濯されて帰ってくるストーリー。疲れちゃってる表情、よごれてクタっとしてる表情、洗濯機で洗われてるところ、干されてるところのど、どのページをめくっても可愛いテディベアがいっぱい。テディベアの数を数えていれば、いつの間にか数字を憶えちゃう(それよりも、テディベア大好きになっちゃいます)。


“alphabet”と“apple”を書けて「applebet story」。

applebet story1973

 byro bartoん(バイロン・バートン)の作ったABC絵本は、リンゴがころころ転がって大騒ぎになっちゃう場面にアルファベットを重ね合わせる愉快な『applebet story』。alphabetをもじってapplebetに変えちゃうところが、なんとも愉快な作品。

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K k king より

ジョン・バーニンガム
のABC
John Burningham's ABC1964

 ジョン・バーニンガムは1937年に生まれ、学校ではほとんどの絵を描いてばかり、その後、ロンドンのCentral School of Art to study illustrationに入学するまで、イタリアで林業や農業をしたり、建築の学校で働き、イスラエルでは解体作業をしていたそうです。卒業後はイスラエルに戻って映画会社でセットや模型や人形のデザインをし、クリスマスカードのデザインやロンドンの郵便のデザインやテレビの予告編なども作っていました。1963年に出版された「The adventure of goose with no feathers」で、Britain’s prestigious Kate Greenaway Medalを獲得。その他にも「Hey! Get Off Our Train」では、Parent’s Choise Awardに選ばれたりと、すばらしい経歴の持ち主。『John Burningham's ABC』では、アルファベットとともに、楽しいページが展開してます。
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rk(箱舟)から始まる

A FOR THE ARK1952

ロジャー・デュボアザンが、ノアの箱舟のお話をABC絵本に生まれ変わらせた『A FOR THE ARK』。
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圧倒する構図の木版画(ウッドカット)
ABC de Puerto Rico1968

 見開き全面を使い、木版画(ウッドカット)持ち前の力強さを活かし圧倒的な迫力で描かれた『ABC de Puerto Rico』。
AIGA(American Institute of Graphic Art)の、1968年のベスト50冊に選ばれた傑作です。
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